哲学堂公園

中野区松が丘1丁目34、西武新宿線新井薬師前駅付近
  • ここは中野区にある哲学堂公園だよ。
  • 哲理門をくぐったら精神修養のはじまり。
  • この門は妖怪門とも言われていてさ。
  • 右に天狗像。
  • 左に幽霊像が置かれてるんだ。
  • 妖怪とか、幽霊とかってさ。
  • 外国から来た人も怖がるのかな?
  • 日本人しか襲わない妖怪とかいるよね?
  • 外国にはドラキュラとか、狼男がおるやんか。
  • あれは作り話じゃん。
  • 妖怪だって迷信やろ?
  • 迷信はさ、戦国時代を舞台に、
  • 江戸時代の人が創作したものが多いんだってさ。
  • 江戸時代の人はそれを物語として楽しんでた。
  • 迷信って作り話なん?
  • 明治時代以降…、
  • なぜかそれが実話のように語り継がれて、
  • 大正時代には迷信に縛られる人が増えてさ。
  • それが教育の妨げにもなってたんだって。
  • なんでも神様のせいにしてた?
  • でも、火のないところに煙は立たないって言うじゃん?
  • 明治時代に…、
  • その問題をなんとかしようとした人がいたんだよ。
  • それが、この公園を作った…、
  • 井上円了(いのうええんりょう)
  • 江戸時代から大正時代まで生きた、哲学者だよ。
  • なにをしたの?
  • 日本人の心にある妖怪を、
  • 科学的に解明して、迷信打破していったんだ。
  • 例えば、どんなの?
  • んーと…、
  • コックリさんの仕組みも科学的に解明したよ。
  • コックリさんって幽霊の仕業じゃないんや?
  • 狐狗狸さんって書くから、
  • キツネとかタヌキのしわざか思った。
  • コックリさんは、
  • 元はテーブルターニングと言って、
  • 無意識に指が動いてしまう潜在意識を使った遊びだよ。
  • 1884年にアメリカから伝わってきてから、
  • 日本ではコックリさんって名前で流行したんだ。
  • この公園、哲学者の像も多いけど…、
  • 妖怪だらけやな。
  • 円了は妖怪博士と呼ばれてたからね。
  • その妖怪博士は、また…、
  • なんで迷信打破を始めようと思ったん?
  • 井上円了は、
  • 東洋大学の元になった哲学館という大学を、
  • つくったんだけど、
  • ある事件をキッカケに辞めたんだ。
  • なんの事件?
  • 1902年、哲学館事件
  • 当時、無試験で教員になれたのは、
  • 国立大学を出た人だけだったんだけど。
  • 私立大学の卒業生でも、
  • 無試験で教員になれるように主張してたんだ。
  • でも、私立の哲学館の卒業試験で、
  • 動機が善ならば、弑逆(しいぎゃく)も許されるのか?
  • という内容があったのが問題になったんだ。
  • そもそも漢字が読めないよ。
  • しいぎゃくってなに?
  • 自分よりも目上の人を殺す事。
  • つまり、上司とか親とか、身分が上の人を殺す事ね。
  • 殺人は殺人やろ?
  • 正当防衛ならイイんじゃないの?
  • そういう問題じゃなくてさ。
  • 明治時代初期の日本の政治の解釈で言うと、
  • 天皇も殺しても良いのか?という事になるんだよ。
  • 哲学館の答えは「許される」だったから、
  • 当時の文部省で問題視されたんだ。
  • なんかさ、明治時代も江戸時代と似たようなもんだね。
  • 身分制度が当たり前やった時代から、
  • 急に民主主義どうぞってわけに行かないやろ?
  • この哲学の考え方は、
  • イギリス人のジョン・ヘンリー・ミュアヘッドの、
  • 学説だったから、
  • 日本の文部省の考え方には、
  • イギリスからも反論があったんだ。
  • さっき新宿のビル見えたよ。
  • 歩いていける距離ちゃう?
  • それじゃあ、次は新宿に行こうか。