中野長者伝説

新宿区北新宿2丁目22、地下鉄丸の内線中野坂上駅付近
  • 中野区と新宿区の境目にある淀橋(よどばし)だよ。
  • 昔、この橋は姿見ずの橋と呼ばれていて、
  • 未婚の女性がここを通ると行方不明になるって、言われていたんだよ。
  • この橋通ってる青梅街道って、
  • 東京横断の動脈みたいなもんやんか。
  • その話が本当なら、
  • 東京の未婚女性の100万人くらいは行方不明なるな。
  • その行方不明になる理由ってなに?
  • 呪い?
  • 大蛇になった女の呪いだとか。
  • ヘビ女か。
  • 西新宿のこの辺には十二社の池という大きい池があったの。
  • 大蛇はその池の主だったそうだよ。
  • 池なんかあった?
  • 1968年に埋め立てられて無くなっちゃったよ。
  • その池の名残りは、地名でちょっと残ってるよ。
  • この神社はなんか関係ある?
  • ここは熊野神社
  • 室町時代の1400年頃に、
  • 鈴木九郎(くろう)というお金持ちが建てたんだって。
  • その鈴木九郎は中野長者と呼ばれてたんだよ。
  • 中野区に住んでたから中野長者?
  • その当時は中野区なんて区名ないやろ?
  • じゃ、朝日長者かも。
  • そんな簡単に名前変えるなよ。
  • うるさいな。
  • とにかく、その鈴木九朗は大金持ちで…、
  • 稼いだお金の隠し場所に困ってたんだよ。
  • 金庫に入りきらんかったんやな。
  • 銀行もないしね。
  • だから、財産を使用人に運ばせて、淀橋を渡っていって、
  • 新宿中央公園あたりにお金を埋めて、
  • 口封じに使用人ごと埋めてきたらしいよ。
  • おそろしい話やな。
  • 行きは一緒だった使用人が、帰りはいないから。
  • 淀橋は、姿見ずの橋と呼ばれるようになったとか。
  • あれ?未婚女性が消えるようなってから、
  • そう言われたんちゃうの?
  • まあ、どっちでもいいじゃん。
  • 鈴木九郎には小笹(こざさ)という一人娘がいたんだけど。
  • 殺された使用人達の怨念で蛇になったとか。
  • その蛇がさっきの十二社の池の大蛇?
  • で、その大蛇が未婚女性を行方不明にしとるってわけ?
  • 蛇の目的がわかんないしさ。
  • その話を信じるほうが難しいぜ。
  • ここがその中野長者の家があった成願寺(じょうがんじ)。
  • 若い娘を失った鈴木九朗が、
  • 悲しみのあまり出家して建てたお寺だよ。
  • そんな真面目な人が、使用人殺してたとは思えへん。
  • ただの迷信だよ。
  • 噂話から膨らんだ作り話だって。
  • でも大正時代の人は本気で信じてたらしいよ。
  • その500年も前の、ようわからん話を?
  • みんな淀橋を避けるようになって、交通にも影響が出てたから、
  • 淀橋の工事をしたかった浅田政吉が、
  • 民俗学者の柳田国男を呼んで、浄め祭をしたんだって。
  • 500年前の蛇を追い払ったんだ。
  • パフォーマンスやな。
  • 盛大な浄め祭だったから、
  • 淀橋の迷信払いと当時の新聞にも載ったらしいよ。
  • それ以降、淀橋伝説を気にする人もいなくなった。
  • もっと、めっちゃ怖い話ない?
  • それじゃ、次は、四谷怪談行こうか。