- 聖路加国際病院だよ。
- せいるかこくさいびょういん?
- ドクター・トイスラーが1902年に作ったんだよ。
- ベージュの色が特徴的。
- あの大きいビルも全部病院?
- あっちのビルは殆どオフィスで貸してるよ。
- 何階くらいあるん?
- 大きいほうが47階で、
- 小さいほうは38階。
- このレトロな感じの建物かわいい。
- こっちは旧病院棟で、礼拝堂もあるよ。
- こういうデザインって素敵。
- ドクター・トイスラーが考えたん?
- 3人のチェコ人と、1人のアメリカ人が建築設計したんだよ。
- 今日は、その中のアントニン・レーモンドの話をしようかな。
- どういう人?
- 1888年にチェコで生まれて、
- 1910年にアメリカに移住。
- その後、アメリカ人になってから、
- 1922年に日本に来て建築設計の事業を始めたんだ。
- どれくらい建てたの?
- 教会とか学校とか、大使館とか、
- 60以上の建物を設計したよ。
- 私、見たことあるかな?
- レイモンドは日本の建物の事をよく知っている、
- 数少ないアメリカ人の中のひとりだった。
- だから、太平洋戦争中に帰国してから、
- 建築家として、米政府の爆撃作戦に協力したよ。
- 建築家が、爆撃作戦に?
- どんな協力するの?
- 日本の民家を忠実に再現して、
- 焼夷弾を使った空爆で、いかに効率的に燃やせるか?
- それってどうなんやろ?
- レイモンドは日本が好きだったけど、
- ナチスに母国を迫害されたチェコ人として、
- 日本がナチスと同盟関係を結んだ事が、
- 許せなかったという話もあるよ。
- 複雑な気分だ。
- それと、早期に戦争を終わらせたかった・・
- という思いもあったそうな。
- 戦争が終わったらどうしたん?
- 戦後すぐに日本に来て、また沢山建物をデザインしたよ。
- でも、自分が作った建物が、
- 米軍によって接収されてるのを見て激怒したんだ。
- なんで怒ったん?
- アメリカ人は、建物をペンキで真っ白に塗っちゃうからね。
- なんで塗るの?
- 白く塗っときゃ綺麗だと思ってんじゃない?
- 爆撃された時、この病院は残ってたの?
- 東京大空襲の時とか、原爆投下の時に、
- 米軍は、こんなビラを空からバラまいたんだよ。
- なにこれ?
- 「ここは爆撃するので逃げてください。」
- 優しいやん。
- こういうのも心理作戦で、
- 爆撃される恐怖で戦意を喪失させる。
- 難しいな。
- 戦争ってのは、いかに少ないリスクで、
- 効率的に有利にしていくか?という作戦の繰り返しだよ。
- ますます難しい。
- ねえ、これ見て逃げた人とかいないの?
- この紙を拾ったら、憲兵に届けないと罪になったよ。
- 私ならさっさと逃げるな。
- この病院は?
- 爆撃されないために十字架を黒く塗ってたそうだよ。
- 黒い十字架ってゴシックホラーな感じだね。
- でも実際、米軍機は十字架のある建物とか、
- 米兵の捕虜がいるところへの爆撃は避けてたそうだから、
- 十字架は塗らないほうが良かったかもね。
- じゃあ、この病院は爆撃されなかったんや?
- 「この病院は爆撃しない」ってビラ撒かれた。
- いちいち細かいな。
- なんでここは爆撃しないの?
- 戦争後に、米軍の病院として使いたかったらしい。
- そのビラを見た築地の人達は、
- 空襲時に病院に逃げてきたとか。
- この人知ってる?
- だれ?
- 野球選手?
- モーリス・モー・バーグ。
- アメリカの野球選手だよ。
- シカゴホワイトソックスとかのキャッチャーさ。
- 野球のこととかよく知らないや。
- この人はCIAのスパイだった。
- スポーツ選手なのに?
- なんかカッコイイ話になってきた。
- 1934年に日米野球の試合で日本に来た時に、
- 試合を欠場して、この病院に来てたんだ。
- なにやってたん?
- 屋上から東京の写真を撮ってた。
- スパイ活動や。
- そして、その写真を元にして、
- 1942年のドーリットル空襲で、
- アメリカ軍は東京の爆撃地点を決めたんだって。
- その時からアメリカは日本との開戦の可能性を考えてた?
- それ映画みたいな話や。
- そのドーリットルなんとかって何?
- 初めての日本本土への爆撃作戦。
- どういう作戦?
- 16機の爆撃機B25が、太平洋側から日本の上空に入って、
- 軍事関連の施設をできるだけ爆撃して、日本海に抜ける。
- うまく行った?
- 全部破壊されたよ。
- うまく逃げ切った人もいたけど、
- 死んだり捕虜になったりして、殆ど生き残れなかったよ。
- 戦争ネタはタブーとかあって難しいな。
- 日本はタブーだらけの国だからね。
- じゃあ、わたしが靖国神社について細かく教えてあげようかな。