- 秋が来ると目黒がさんま臭くなるよね。
- 目黒さんま祭り?
- そうそれ。
- なんで目黒でさんま?
- 海もないし。
- 市場があるわけでもないよ?
- 落語があるんだ。
- へえ。
- 3代目の三遊亭金馬(さんゆうていきんば)とか、
- 10代目金原亭馬生(きんげんていばしょう)が得意だった落語だよ。
- どんな話?
- むかしむかし、お殿様がいました。
- お殿様って誰?
- 徳川?
- 設定は未定。
- とある大名だよ。
- 作り話やった。
- お殿様は目黒に鷹狩に来ました。
- 目黒区?
- 目黒駅の近くで鷹狩り?
- 目黒はさ、世田谷区から大田区まで含まれてたらしいから。
- じゃあ、目黒区じゃないかもなの?
- かもね。
- でも世田谷区は伝説が多いんだから、
- さんまくらいは目黒区でもいいだろ?
- 目黒区と世田谷区は入り組んどるな。
- さて鷹狩の最中、お殿様はお腹がすいてきたぞ。
- ところが、お供がお弁当を忘れてきちゃった。
- 速攻打ち首や。
- ひどい。
- ちがうよ。
- するといい匂いが…。
- 嗅いだ事もない美味そうなにおい。
- お殿様が「あれは何の匂いか?」と聞くと、
- さんま?
- お供は、答えました。
- これは下衆庶民の食べる、下衆魚、
- さんまというものを焼く匂いでございます。
- さんまは下衆(げす)かいな。
- 下衆の食べ物は、決してお殿様のお口に合うものではありません。
- と言ったけど、お腹が空いた殿は話をきかない。
- さんまの匂いは食欲をそそるよ。
- 仕方なく焼いたさんまを持って来させて、
- お殿様は食べたわけだ。
- 苦いって言うたやろな。
- うまい!って言った。
- お殿様はさんまが大好物になりましたとさ。
- さんま嫌い?
- ハラワタは好きやない。
- それからというものお殿様は、
- 余はさんまを所望(しょもう)すると、
- さんまを食べたいと言うようになった。
- 殿様、庶民趣味にハマったな。
- そこで家来たちは、
- 日本橋から新鮮なさんまを取り寄せてきて、
- はらわたやら、ヌチャっとした脂やら、小骨やらを取り除いて、
- 立派な椀に入れて出したそうな。
- さんまが美味しいのはハラワタだよね。
- 苦いやろ?
- その調理されてグズグズになったさんまを食べて、
- 「まずい…」と、
- さんまは丸ごと焼くのが一番おいしい。
- 調理すればするほど、まずくなる。
- 生のサンマ好きやで?
- まるごと食べるの?
- ちゃんとさばいたヤツや。
- このまずいさんまはどこのさんまだ?と聞くと、
- 家来は「日本橋の魚河岸(うおがし)のものです」と答えた。
- 殿さまは、
- 「うーむそれはいかん、さんまは目黒に限る」と言ったそうな。
- 目黒とか関係ないし。
- この落語は誰が作った話なのかは謎らしいよ。
- でも、殿様の世間知らずな感じが、可愛いだろ?
- サンマなんてどうでもええわ。
- 何かネタない?
- 文京区にUFOが停まってるみたいなビルある。