五・一五事件
- 千代田区永田町２丁目、銀座線溜池山王駅付近
- 警察官多すぎ。
- 今日はなんでこんな警察多いの？
- 首相官邸の前やんか。
- そうだっけ？
- 首相官邸って何するとこ？
- 内閣総理大臣が働いてるところや。
- 警備が薄かったらおかしいやろ？
- ねえ、総理大臣が狙われた事ってあるの？
- 1932年(昭和7年)5月15日に、
- ここ首相官邸で、
- 内閣総理大臣の犬養毅(いぬかいつよし)が殺されたんよ。
- もしかして、５月１５日だから、五・一五事件？
- あたり。
- 二・二六事件もだけど、日付を事件名にすると混乱するよね。
- 犯人は誰？
- 海軍の青年将校を中心とした軍人と、
- 賛同した何人かの民間人や。
- これはクーデターってこと？
- この事件は、軍部のクーデターじゃなくて、
- 思想を持ったテロなんやって。
- 思想って？
- 昭和維新やな。
- 二・二六事件の青年将校も、昭和維新って言ってた。
- なんで首相が殺されたの？
- この時代、めっちゃ不況やって。
- 餓死とか、身売りとか、普通やったらしいで？
- そのくせ、財閥とか汚職政治家とかはええ思いしてんねんて。
- 全部、総理大臣が悪いって事か。
- 国民はそう思ってたやろな。
- でも、この事件の発端はもっと複雑やったらしいで。
- 犯人が海軍ってことは、海軍の恨みを買ってた？
- 第一次世界大戦で戦争疲れした世界では、
- 軍縮の方向に進んでたんやって。
- いい事じゃん？
- 実際は、あんたよりちょっとだけ武器持っておきたい。
- っちゅう国ばっかみたいやけどな。
- ズルいじゃん。
- ロンドン海軍軍縮条約っちゅうのがあって。
- 殺された犬養内閣の前の前の、浜口内閣が、
- 勝手に条約結んで、海軍を軍縮したんやって。
- 勝手に？
- 誰に断んなきゃいけないの？
- 軍隊の事を決められるのは天皇だけって、憲法で決まってた。
- でも、海軍にも断らずに政府が独断で決めたんよ。
- 憲法違反じゃん？
- そう、統帥権干犯(とうすいけんかんぱん)問題やって。
- この犬養毅が野党やった時に、与党を責めたんやって。
- 難しい言葉出てきたよ？
- ってことは犬養毅は海軍の味方じゃん？
- そうや。
- じゃあ、なんでその海軍に殺されたの？
- 野党の時に調子の良い事言うて、
- 与党になったら手の平返す人おるやろ？
- あー、犬養毅ってそういうタイプ？
- 殺されてもうた犬養毅が悪いとは言わんけど。
- 国民を納得させながら、手際よく政治をするって難しいな。
- 何か問題が起こると政治家が悪いって言われる。
- んーとさ？
- 犬養首相を殺したのは海軍の人なのに。
- 今、薬袋は国民が納得しないから殺された。
- みたいな言い方したよ？
- そうやった？
- 内閣総理大臣を殺しておいて。
- 犯人は死刑にならんかったけど・・
- 無期懲役？
- 懲役４年から１０年。
- 一番多くて１５年やった。
- 結構、軽い？
- 陸軍の若い将校が、
- そんな罪軽いんやったら、オレもやろうかな？
- って思うくらい軽いな。
- そして実際に突っ走っちゃったのが二・二六事件だよ。
- 首相を暗殺した犯人に対して、
- 気持ちがわからんでもないっていう判決やった。
- 気持ち？
- 国民も、まあしゃあないやって感じやった。
- この時代、すっごい政治家が嫌われてたって事か。
- 政治不信にも程があるぜ。
- この事件から１年くらい前に、満州事変ってあったやんか。
- えーと？
- 中国大陸に駐屯してた関東軍が、
- 中国東北部を占領して・・
- 中華民国から独立した、満州って国を作っちゃった話。
- ねえ、バカな事聞いていい？
- なに？
- なんで、中国に関東地方の軍隊がいるの？
- 中国大陸の関東州におった、大日本帝国陸軍や。
- ああ、それで関東軍か。
- この関東軍のやった事は、国際社会のルールに反するって、
- 日本は叩かれとったけど。
- 調子のええ事ばっか言うて、腐敗しとる政治家よりも・・
- 満州国作って国益をもたらした軍隊のほうがええんちゃう？
- って話になってくる。
- なんかさ、一方的な都合ばっかりだね。
- ネットとかないから、外国側の意見とかわかんないし。
- 気に入らん政治家は殺されるから政府は偏って、
- 軍部はマスコミの検閲も始めたよ。
- 検閲なんてできるもん？
- テレビが普及したんは、1950年代からだから。
- 紙や音の情報を作るのもそんなに難しくないかもな。
- 情報源が新聞とラジオだけか。
- なんだか窮屈な時代だな。
- そのマスコミの情報で、世論が日本人の認識を作って。
- ついに、日本は国際連盟を脱退や。
- もうちょっと戦争歴史系知りたい。
- じゃあ、次はアメ横で闇市の話したろかな。
