太宰治と玉川上水
三鷹市~杉並区、JR中央本線三鷹駅~京王井の頭線久我山駅付近
  • 玉川上水だよ。
  • 多摩川の上流から四谷まで全長43km
  • 江戸時代の生活を支えた命の水だよ。
  • そのわりには、しょぼいドブ川やな。
  • しょぼいって言うなよ。
  • この川ほんとに流れてんの?
  • 水が干上がりかけとるで?
  • 今は小さな川だけどね。
  • 昔は「人喰い川」って呼ばれてたんだよ。
  • 迷信の予感。
  • 大きい蛇でもおったん?
  • 前はもっと幅が広くて深かったんだよ。
  • それでいて流れが速かったから。
  • 一度落ちたら、這い上がれない川だったんだって。
  • それで人喰い川か。
  • 今のこのしょぼい感じからは想像でけへん。
  • この橋、どんどん橋って言うんだけどさ。
  • なんでどんどん橋って言ったと思う?
  • 誰かが叩いてたんちゃう?
  • どんどんって美味しそう?
  • 急流が橋に当たってどんどん鳴ってたとか。
  • 音鳴るほど、流れ速かったんや。
  • 見て。
  • 松本訓導殉難碑(まつもとくんどうじゅなんひ)。
  • 1919年(大正8年)に、遠足で来てた小学生が川に落ちて、
  • 助けようと飛び込んだ先生が亡くなったんだって。
  • 子どもは?
  • 他の人が助けたそうだよ。
  • 昭和時代のはじめには、
  • 5年で100人近く亡くなってた時もあったそうだよ。
  • みんな滑って落っこちたん?
  • 柵とか立てなかったの?
  • 自殺者も多かったんだよ。
  • あの石はなに?
  • 水難者慰霊碑。
  • ここで金田一京助(きんだいちきょうすけ)の娘が、自殺したの。
  • だから、金田一さんが亡くなったみんなのために建てたんだよ。
  • なんか人が吸い込まれていくみたいだね。
  • 今の時代だったら電車みたいなもんか。
  • 1948年6月19日。
  • この橋のあたりで二人の男女の遺体が見つかったんだ。
  • 2人の腰は赤い紐で結んであったそうだよ。
  • 心中?
  • 借金でもあったんやろか?
  • 駆け落ち?
  • 作家の太宰治と、美容師の山崎富栄(とみえ)
  • 1kmくらい上流から川に飛び込んだんだって。
  • この石は?
  • 玉鹿石(ぎょっかせき)だよ。
  • わざわざ、太宰治の出身青森から運んできたんだって。
  • だざいおさむって知ってる。
  • 有名な作家や。
  • 何書いた人だっけ?
  • 走れメロス。
  • 走れメロスってギリシャ人が書いたのかと思った。
  • 友達のために走るお話だよ。
  • 太宰治はユーモラスな人だったから、
  • 人の笑いを誘う文章が上手だったんだよ。
  • 明るい人なんや。
  • でも、その明るい人が自殺?
  • 恋人と駆け落ちしたんちゃう?
  • 親が結婚を許してくれなかったとか?
  • 結婚はしてたさ。
  • 美知子さんという奥さんと、3人の子どもがいたよ。
  • 奥さん子ども置いて、愛人と心中かいな。
  • あ、子どもは4人だった。
  • 太田静子という他の愛人の間に娘がいたよ。
  • 他にも愛人いたの?
  • ここまでに3人の女が出てきとるな。
  • 太宰治は美和子さんに遺書を残していてさ。
  • 「誰よりも愛していました」と書いてるよ。
  • 美和子さんってどの愛人やった?
  • 奥さんだよ。
  • 一番愛してたのが奥さんでよかったわ。
  • そういう問題?
  • ほいで、なんで死のうと思ったん?
  • 太宰治の自殺は5回目
  • 4回は未遂で終わったんだよ。
  • なんで、そんな死にたかったん?
  • 尊敬していた作家の自殺に影響を受けたのかな?
  • 誰を尊敬してたの?
  • 芥川龍之介。
  • 龍之介は、なんで自殺したん?
  • ぼんやりした不安。
  • あかんわ、そういう男。
  • 芥川龍之介が死んだ2年後に、太宰治は薬物自殺したよ。
  • でも失敗。
  • その次の年に、田部シメ子という人妻と心中自殺。
  • ちょっとアンタに似とる。
  • 髪型だけね。
  • 相手だけ死んで、自分だけ生き残ったよ。
  • めっちゃ気まずい人生やな。
  • 太宰治の最後の代表作品は「人間失格」
  • 自分の事を書いた自伝で、
  • 自殺する1ヶ月前に完成したんだ。
  • ほんまに、人間失格や。
  • 遺書には・・
  • 「小説を書くのがいやになったから死ぬのです」
  • と書いてあったそうな。
  • 独り言なんか、構って欲しいんかわからへん。
  • 人間失格って、遺書のつもりだったかな?
  • それはないと思うんだ。
  • 新しい小説「グッド・バイ」も書きかけてたから。
  • 人生にグッドバイ?
  • 女の人とのグッドバイ。
  • そういう人は、ぼんやりと不安になって。
  • なんとなく自殺するんかな?
  • ここから見える電車が好きだったんだって。
  • わたしはこういう男嫌いだな。
  • 私は放っておけないタイプや。
  • うそ?
  • 世話を焼いてしまう。
  • お墓は、禅林寺(ぜんりんじ)にあるよ。
  • 遺体が発見された6月19日は、誕生日だったんだ。
  • 毎年6月19日は、桜桃忌(おうとうき)と言って、
  • 太宰ファン達がお寺に集まるんだよ。
  • 重いな。
  • もうお腹いっぱいや。
  • じゃ、仕事始めよっか。